外来魚のお引越し釣り大会。Outsider’s move.

5月も残すところあと数日。週末には6月かー。2018年の前半戦もいろいろあったなぁ……としみじみ思う男、saltwater-ffです。こんにちは。本日は5月26日(土)に開催された、とある小さな釣り大会のお話です。

日本のゲームフィッシングを考える時、特に内水面のゲームフィッシュにおいて、外来種移入の現状は避けては通れない問題です。ラージマウスバス、スモールマウスバス、レインボートラウト、ブラウントラウト他……のようなルアー、フライフィッシングのメジャー魚種はもちろん、ニッコウイワナ、ヤマトイワナ、ヤマメ、アマゴの混生、ヘラブナ、コイの分布拡大、湖産アユの放流とそれに混じって分布を広げる琵琶湖産コイ科魚種等々。はっきりいって今の日本のフィールド(内水面漁場)はむちゃくちゃです。むちゃくちゃになった原因は様々な経緯や事情があるので割愛しますが、外来種(国内外来種)、在来種という区別は大事ですが、すでに元に戻せるような段階ではないように個人的には思います。外来種も在来種もないまぜになった「ニューワイルド」が出来上がりつつあるんじゃないですかね。

おっと、例によって前置きが長くなってすみません。とある小さな釣り大会というのは、群馬県邑楽郡邑楽町にある中野沼(西沼)で行われた「平成30年度 外来魚駆除大作戦」のこと。農業用のため池として利用されている中野沼は、東沼と西沼が水路でつながった形をしています。この西沼で、県内でも珍しいマミズクラゲやムネカクトビケラといった希少生物が発見されたことから、1999年に邑楽町の天然記念物に指定され、西沼での釣りが禁止となりました。そしてこの機会に環境保全、希少生物保護に一歩踏み込む形での駆除釣り大会が開催されるようになったそうです。

第4回までは釣り上げた魚のうち、外来種はすべて殺処分されてきたのですが、子供たちとその保護者たちから「殺してしまう以外の選択肢はないのでしょうか」という意見が寄せられたことで、邑楽町の教育委員会の方々は「環境保護も大事だが、それと同じように命の尊さを知ることも大切」と考え、殺さない駆除の方向性を模索したとのこと。その結果、特定外来生物の飼養等許可を正式に受け、外来生物の展示や運搬が可能になったのです。

外来魚は悪! 悪者は殺してしまえ!とばかりに、命を奪うことに躊躇しない構図を作り出すのは簡単です。しかし教育者として本当にそれでいいのか。子どもたちに命の尊さを教えるとともに、排除するのではなく共存共栄を模索する大人の姿を見せることを選ばれた邑楽町教育委員会の方々の英断には、本当に頭が下がるばかりです。

私は仕事の関係もあって、昨年もボランティアスタッフとしてお手伝いをさせていただきました。今年は仕事の関係性がなくなってしまったのですが、いち釣り人として活動を支援したく思い、ボランティアとしてお邪魔させていただきました。

多くは釣りをほぼ体験したことがない方々で、この際、腕前とか釣果は二の次。笑顔で釣りを楽しんでいる参加者の皆さんと一喜一憂して、私も大いに癒された1日でした。

この日釣り上げられたラージマウスバスは、県内の管理釣り場(飼養許可済み)に引き取られていきました。

外来魚駆除という大義名分の下に、子供たちに「意味なく命を奪うこと」を強要する釣り大会が各地で開催されている昨今。「殺さない駆除」という試みを応援していきたいと思います。