心震わせる魚、その名はスヌーク。 Fish of the Week, The SNOOK.

はい。今日の明け方、あまりに眩しい試合に感動して声が出なかった男、saltwater-ffです。こんにちは。なんの試合かは言うまでもないでしょう。今大会、いや、日本のサッカー史においてベストバウトに挙げてもいいくらい充実した内容だったと思います。後半開始から2点をもぎとったスピードと決定力、そしてそんな日本代表を上回る赤い悪魔達の本気のプレー。フィジカル、パワーといったシンプルな強さに加え、選手層の厚さの差が出たといえばそうかもしれません。ただ、ここまで戦えたのも事実。次回のカタール大会が今から楽しみで仕方ないですね。

おっと、このままだとブログのタイトルが「芝生グラウンドとスパイクシューズ」に変わってしまいそうなので、サッカーの話はこの辺にしておいて。本日は私が大好きな魚、スヌークについてのお話。

 

スヌーク。セントロポムス(centropomus)ホソアカメ科、に属するスヌークの仲間の中で、特に1m以上に大型化するのがコモンスヌーク。北アメリカ・フロリダ州、メキシコ湾、カリブ海、ブラジル・リオデジャネイロ近海などに分布し、沿岸、汽水域、岩礁帯、マングローブ帯をはじめ、淡水域にも侵入する。食性は動物食性で、主に小魚や甲殻類を捕食する。言うまでもなくルアー、フライフィッシングの好敵手。

私はこれまで都合4日、フロリダ州のエバーグレーズ国立公園内でスヌークを狙う機会に恵まれました。そのうちスヌークが釣れた日は3日。たった3日で何かを偉そうに書くつもりはないけれど、この魚の底知れぬ魅力については、以前からぜひ一度書いてみたいと思っていたのです。

2015年、長年恋い焦がれたエバーグレーズで釣りができるチャンスを得て、出発までの日々にまだ見ぬスヌークを想像して止みませんでした。日本にいる魚では、おなじみのスズキ(シーバス)やヒラスズキ、アカメが比較的近いかなーとか。残念ながらアカメは釣ったことがないですが、スズキとヒラスズキに関しては釣った経験があったので、スヌークの体型や口の形状から、ファイトや捕食スタイルはそれなりに想像できました。またYoutubeでスヌークフィッシングを扱った映像を探し、魚としての強さ(ポテンシャル)を理解できたつもりでいたのです。

2015年のチャレンジは、悪天候のため結局釣りができず、私が初めてスヌークを手にできたのは2度目の釣行の2016年でした。エバーグレーズのスヌークシーズンとしては、ほぼ終わりの10月。午前中にメーター近いスヌークに一発でフックを伸ばされ、この魚がただものではないことを思い知ります。その後にキャッチしたのは30cmくらいのベビースヌーク。以降、まったく釣れない時間が続き、最後の最後に入ったポイントで、ようやく80cm級のスヌークと対面することができました。私の中でスヌークがライフフィッシュになった瞬間でもあります。このスヌークは濃いウッドカバーの脇でヒットさせたのですが、ランディングするまでの数分間、私は自分の想像(妄想?)がいかに愚かだったかを思い知ります。

とんでもなく強いのです。ヒット直後から走る、水面を割ってジャンプする、テイルウォークする。そして一度潜ったら、ジリジリとドラグを滑らせる粘り強さで抵抗します。これまで釣ってきた日本のスズキが弱いとはいいませんが、仮に同じサイズのスズキとスヌークを比べるとしたら、1.5〜2倍くらいのファイターなんじゃないかと思います。

おまけにランディング後にリーダーをチェックしたら、50ポンドのフロロがざらざらに……。それもそのはず、スヌークの吻部にはヤスリのような歯がびっしり生えそろっているし、エラブタのエッジは触り方によっては刃物のような鋭さを見せます。

なんていうか、日本の魚とは異なる野生、野蛮、獰猛とでも表現すればいいのか、誤解を恐れずに書けば「生物としての強さ」をひしひしと感じました。これ、不思議なんですけどラージマウスバスでも同じような印象なんですよね。アメリカで釣ったラージマウスバスと日本で釣ったラージマウスバス。DNA的には同じ魚のはずですが、ファイトの強さも歯のざらざら具合とか、まったく別物のように思えることが多いです(あくまで個人の感想です)。

以前から私にはひとつ疑問がありました。アメリカのスポーツフィッシングの雑誌やウェブの記事で、スヌークが取り上げられる機会が多いのは何故なのか。ビッグゲームならマーリン、ターポン、ツナに加えてシャークフィッシングが人気です。フライフィッシングに限定すればボーンフィッシュ、パーミット、トレバリー、レッドフィッシュという素晴らしい魚達がいる。でも雑誌の表紙を飾るのはスヌークが多い。それほどまでにアメリカ人を魅了するスヌークとは、一体どんな魚なんだろう。この疑問は、自分でスヌークを釣ってみるまで理解できませんでした。

しかし、スヌークを釣ってみると「あぁ、なるほど」と理解できたような気になりました。それほどまでにスヌークフィッシングはゲーム性が高く、かつスヌークという魚が非の打ち所がないくらい素晴らしい魚なのです。これは私が口角泡を飛ばし説明しても、その魅力の5%も伝えられないと思います。

ただ仮にスヌークが日本近海にいたとしても、エバーグレーズで釣ったスヌークほどの強さじゃないんだろうなーとか、妄想しています。ま、いたらいたで喜んで釣りに行くと思いますが(笑)。

2018年2月。私は4度目のエバーグレーズでスヌークの猛攻に呆然としていました。魚の数も反応もこれまでとは大きく違い、すこぶる良いのです。しかし、どのスヌークも強すぎる!!  私のわずかな経験の80cmのスヌークが消し飛ぶほど。50cmくらいのスヌークですら手こずるほど強い。日本でそれなりに大きな魚も釣ってきたつもりでしたが、ベストコンディションのスヌークがこれほど強いとは……。結局、50cmより大きいスヌークは1匹もキャッチできず。

スヌークはランディングした後もかなり暴れる魚ですが、どういうわけか↑の写真のように側線に触れるように、横にして持つ(というか手のひらに乗せる)と全然暴れなくなります。これがウソのような本当の話で、びっくりするほど大人しくなります。ちなみに教えてくれたのは、ご存じヒロ内藤さん、その人であります(↑の写真の被写体もヒロさん)。

ヒロ内藤さんも、自分のことをスヌークフィッシングに魅せられたひとりと仰っていました。バグリー社に勤務していた頃は、周りのアメリカ人もびびるくらいエバーグレーズに通い続け、ホットスポットを開拓していったそうです。そしてこの日はヒロさんがメーター級のスヌークを見事キャッチ。その時のお話はまた機会があれば書こうと思います。

↑は私の人生5匹目か6匹目のベビースヌーク。この時はジャークベイト主体の釣りで楽しんだんですが、ルアーに対する反応スピードとファイトの鋭さは、この大きさであっても油断できない相手です。このスリムなボディのどこにあれほどの爆発力を備えているのか、不思議に思うばかりです。

ちなみにフロリダ州においてスヌークは厳正に管理・保護されており、個体の著しい減少や偏りが起きないよう配慮されています。アングラーが1日にキープできるバッグリミットは1匹(しかも28インチ以上、32インチ以下に限る。※エバーグレーズでは28インチ以上、33インチ以下)。それ以外はオールリリース。もちろん漁師さんがスヌークを漁獲することも禁じられています。

スヌークはとても美味しい魚として有名ですが、殺して食べてしまうより、生かして逃がす方が経済的にもメリットが大きいと判断されているから、このようなルールになっているそうです。さすが合理的な考え方をする国だと思います。

スヌークの魅力に取り憑かれたままの私は、いったいあと何度スヌーク釣りに行けて、何匹と出会えるかわかりませんが、はるか異国の魚だからこそ、1匹でも多くいて欲しいと思うのです。

それでは、また。