「釣りマ!」騒動(サービス一時停止、事実上の終了?)について思うこと。 Can you believe that information?

ついにというか、ようやくというか、例のワクチン接種1回目を済ませた男、saltwater-ffです。こんにちは。接種について思うことや、私が体験した副反応については大したことないので、この話題はこの辺で。

さて「釣りマ!」騒動の話です。釣りマ!が何かご存知でない方もいらっしゃるかもしれないので最初にお伝えしておくと、釣り場情報を個人間で売買できるサービスのことで、既存のものでいうなら、ヤフオクやメルカリで物を売買するのとほぼ同じと思ってください。

「ほぼ」と書いたのは、ある点において非常に危なっかしく、ひいては釣りという趣味の存続(大げさ)にも関わってくるのでは?と感じた方が多かったのだと思います。途中の経緯は後述しますが、結果として8月31日をもってサービス一時停止という事態に陥りました。

釣りマ!がサービスを開始したのは8月3日。本サービスを提供する東北新社からプレスリリースが公開されていますので、興味がある方はそちらを参照ください。

サービス停止前の「釣りマ!」のスクリーンショットその1。大喜利会場(後述)が一掃された後の状態。一見するとまともな釣り場情報のように思えますが、中央列の一番上にある「ビワマスのオカッパリ(岸釣り)」は禁止ですぜ……(※岸釣りできるのは、資源保護のため許可を受けた採卵協力者のみ)。

 

以下はプレスリリースに書かれている特徴ですが、

●「釣りマ!」は個人の釣り人同士で情報の売買が可能となる、釣り情報のフリマサービス。

●個人が保有する釣りに関するマル秘情報が買える。「地元の人だけが知っている情報」や 「釣り仲間にしか教えていなかった情報」を、いつでも簡単に購入することができる。

● 釣り人が持つ知識や経験など、長い時間と労力をかけ獲得してきた「情報」を販売することができる。※ポイント制度あり

● 売りに出された情報を購入するだけでなく、欲しい情報を依頼することも可能。釣りを楽しむための情報なら「駐車場の場所」から  「釣った魚を料理してもらえるお店」まで、何でも依頼することができる(ミッション機能という)。

だそうです。

サービス停止前の「釣りマ!」のスクリーンショットその2
サービス停止前の「釣りマ!」のスクリーンショットその2。今となってはキャンペーン実施中!のキャッチコピーが痛々しい。メータークラスのライギョのポイント情報が売買されちゃうとか怖すぎです。

 

一見、情報を販売する側も購入する側もメリットがあり、Win -Winの関係性(売買の場所を提供している釣りマ!運営もWin)が成立するように思えますが、大海原ブログをわざわざ覗きに来てくださるようなコアでディープでカッチカチの釣り人(=ルアー&フライフィッシャーマン)であれば、すぐにいくつもの危うさが頭をよぎるでしょう。

僭越ながらいくつか挙げさせていただくと、

●釣り場が荒れる(魚が釣れにくくなる)

●釣り場周辺との折り合いの問題(路上駐車やトイレ、朝晩の騒音、ゴミの不法投棄など)

●売買される情報の信頼性①そもそも釣りをしていい場所なのか、情報の正確性が保証されていない

●売買される情報の信頼性②危険な場所の判断は?自己責任で済ませてよいのか(例えば釣り初心者が一人で地磯とか)

●事件、事故が発生した場合の責任の所在(当事者間だけの責任?サービス提供者の責任はないの?)

●情報の転売が出来てしまう(釣りマ!内で購入した情報以外に、過去の釣り雑誌やウェブの情報を転売出来てしまう)

●釣り場と称される場所には、個人所有の土地が含まれていることが多く、不法侵入などの犯罪教唆につながるのではないか

といった感じでしょうか。

 

釣り関係でフリマ系サービス提供で騒動になったといえば、2019年の「Fish Sale」(遊漁者が釣りすぎた魚をオークション形式で売買するサービス)の炎上が記憶にある方もいらっしゃると思います。まぁ、あれもかなりグレーというか、穴だらけのサービスでしたが、釣りマ!も勝るとも劣らないお粗末なものでした。

まぁ最初に穴だらけでサービス開始して、炎上させて注目度を集めてから再始動というのは、時々ある手法なのでもしやそれか⁉︎とも思いましたが、炎の勢いが想定以上だったのではないでしょうか。

それというのも東北新社といえば資本金24億、社員数880名超、東証JASDAQ上場の一流企業です。映像制作の総合プロダクションとして、数多くの映像作品に関わっているので映画好きの方にはおなじみかもしれません。

その東北新社の釣り好き社員が、猛烈にアピールして始まったサービスが釣りマ!というふれ込みでしたが、肝心のサイト自体、本当に東北新社のお仕事なんですか?というような杜撰なつくりで、もしかしてTOKYO2020関係で作ってたけど無観客になって、どっかのチケットやグッズ販売用のナニを使いまわしてんの?と勘繰ってしまうほどの急ごしらえ感でした。

それでまぁ、大多数の釣りファンが危惧したというか、このサービスがこれから招くヤバい未来を本能的に察知したのか、あっという間に大喜利会場のようになってしまい、東北新社には内閣総理大臣のご子息が勤務されているということで、それ関連のポストもあったりなかったりで、運営側の思惑通り?炎上となったわけです。だいたい画像を見てもらえれば当時の大喜利会場のにぎわいがわかると思います。

以上の3点は、大喜利会場だった頃の釣りマ!のスクリーンショット。これはこれで盛り上がっていたようなので、もしサービス再開する際には「毒くらわば皿まで」の精神で、大喜利部門として独立したコンテンツにするといいかもしれません。知らんけど。

 

悪ふざけというか、妨害というか、ひと昔前なら「荒らし」と呼ばれたことでしょう。荒らし行為自体は決して許されるものではないですし、褒められたものではありません。もちろんこれらは釣りマ!が本来考えていたものとは全然違う投稿ですし、こんなのを見てしまうと「なんかヤバい」となって同時に「え、こんな簡単な荒らし対策もしてないの?ダイジョブ?」となって、すぐさま「ここの運営に名前とかクレカの番号とか、個人情報を渡すの?マジ勘弁!」となりますよね。今どきそういうものですって。

そしてSNS上では当然のように、釣りマ!に対して懐疑的な意見が多く見られたように思います。かくいう私も釣りマ!の危うさを感じつつも、表立って意見するのは憚られました。

 

その理由は、これまでに釣り関連の雑誌や書籍を編集・制作してきたこと。機会としては減少していますが、今後も少なからず釣り場を紹介する立場にいること。見方によっては釣りマ!とさして変わらないのではないか、と自問自答する時間が必要でした。

 

釣りの雑誌や書籍は、30年より昔のものであれば、釣り場の情報を事細かに記したものがあったと思います。それこそ、クルマを止める場所や、見回りの時間(!)とかも書いてあったり。他にも読者同士の釣り友達募集のコーナーには、氏名はもちろん住所や電話番号が平気で書いてあったりして、実におおらかな時代だったなぁ……おっと、話がそれました。

今やそんな釣り場情報が掲載されている雑誌や書籍は見かけません。もしかしたらあるかもしれませんが、それでも極々少数だと思います。もちろん公表しても構わないであろう釣り場、例えば神奈川県芦ノ湖や山梨県河口湖といった観光産業として成立しているところ。もちろんこれらの釣り場においても、入漁券や駐車場など守るべきルールが存在します。

また○○湖の■■ワンドや××川の△△橋付近という風に、具体的な名称を公表することはあっても、その中のピンポイントまでは書くことはありません。まぁこのへんのさじ加減については、個人の主観によるところが大きいため、前述の○○湖の■■ワンドという表現でもNGと思われる方もいらっしゃるでしょう。

それでも雑誌や書籍の場合は、一般に広く知られる前に編集部内で複数人がチェックすることで、情報の真偽はもちろんピンポイント情報を出しすぎていないか?といった「さじ加減」の調整が行われることがあります。

 

おっと、釣りマ!の話に戻しますね。

釣りマ!が多くの釣り人から反感を買ったのは事実ですし、情報売買サービスとしての不備があったは否めないでしょう。しかし、良いところもあったと思うんですよね。それは私自身がずっと感じてきた釣り関連の雑誌や書籍、映像といった既存メディアに共通するものでもあり、おそらく界隈の同業者の方、そして釣りファンの方であればなおさら気づいていることだとも思います。それを変える可能性が釣りマ!にはあったのかも……と思ったり。

 

それが何かと言うと、情報の鮮度というか、瞬発力というか。わかりやすく書くと「今釣れている情報」を提供できるサービスになれたのかもしれないと思うわけです。釣りの情報というのは、常に「今」が重要なのは釣りを楽しまれている方なら誰もが感じていることでしょう。昨日釣れた、先週釣れた、先月釣れた……と情報の鮮度が下がるにつれ、信頼度も下がっていくのは当然です。それゆえに既存メディア側も季節を先取りした取材を行なってはいますが、やはり旬な時期ではないので、あくまで予想というか見込みの話になりがちです(前倒しでもしっかり目的の魚を釣る各方面のプロアングラーはさすがだとも思います)。

 

そこで釣りマ!です。「今、魚がかかったまま書いています!」、「30分前に始めて、もう5匹釣ったので投稿します!」、「5分前に釣りました!」などのナマ情報がバンバン飛び交うようになれば、これは一定数のニーズがあると思うんですよね。さらに時間が経過するほどに価格が下がっていくとかにすると、鮮度の高い情報を供給しようという意欲をかき立てられちゃったり。

まぁ、最初の方に書いた釣りマ!に感じた危うさを解決したと仮定したうえでのお話。あくまで私の妄想です。

でも釣りマ!は新しく見えすぎ、かつ急ぎすぎたのかもしれないなぁ、とも思うわけです。新しいものって最初はビックリして受け入れ難いって場合がままあるじゃないですか。釣り人ってなんだかんだ言いつつも保守的な考え方が多いですし(笑)。

 

釣りマ!の失敗のように、容易に想定できる「新サービスの危うさ」を何とかクリアして、釣り人の不安を払拭できるところまで準備をきっちり行なったうえで、こういった情報売買サービスが受け入れられるようになれば、釣り界隈がよりいっそう盛り上がる要素になる未来もあるのかなーと。まぁそのための意識改革だったり、ルールの整備だったり、根回しだったりは欠かせないですし、実際にやるとなったら相当骨が折れそうですけどね。

もし情報売買サービスが広まったら、既存メディアは困る=お前も困るんじゃないの?と思われるかもしれませんね。でも、たぶん大丈夫でしょう。きっと情報売買サービスとタイアップして一緒にやっていくメディアもあるでしょうし、対抗して類似のサービスも出てくるでしょう。ま、その前に何を偉そうに語ってんだって私が叱られそうですが(笑)。

それでは、また。